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悪魔が来りて笛を吹く


私はこの小説だけは映画にしたくなかった・・
原作者が語る世にも恐ろしい事件
金田一耕助、最大の事件の幕が開く


今回は横溝正史ミステリー映画「悪魔が来りて笛を吹く」です。
金田一耕助役には西田敏行。1979年に東映で映画化された横溝正史珠玉のミステリーがようやく最近になってDVDリリースされました。






物語は昭和22年に銀座の宝石店・天銀堂の店員を毒殺する宝石強盗事件が発生し、その容疑者で疑われた元・子爵が自殺します。それから死んだはずの子爵が現れて連続殺人が起きるというものです。
その難事件を解決するのが、名探偵・金田一耕助です。
今回は横溝正史ミステリーの世界を知っている方を対象とした書き方なので、おのずと犯人が判ってしまうかもしれません。
3/13 19:00追加ピクチャー&追記しました。
出来るだけ犯人は隠してありますので、この横溝正史ミステリーの世界に興味のある方は下の追記を読む、からご覧下さい。
1979年1月21日 東映系にて公開
監督 斎藤光正
脚本 野上龍雄
原作 横溝正史
企画 角川春樹事務所
製作 角川春樹
プロデューサー 橋本新一
撮影 伊佐山巌
美術 横尾嘉良
音楽 山本邦山、今井裕
テーマ曲「黄金のフルート」
主題歌 榎本るみ「旅ゆく者よ」
CAST
金田一耕肋・・・西田敏行
等々力警部・・・夏八木勲
椿英輔・・・・・仲谷昇
椿秌子(あきこ)・・・・・鰐淵晴子
椿美禰子(みねこ)・・・斉藤とも子
新宮利彦・・・・石浜朗
新宮華子・・・・村松英子
玉虫公丸・・・・小沢栄太郎
菊江・・・・・・池波志乃
信乃・・・・・・原知佐子
目賀重亮・・・・山本麟一
三島東太郎・・・宮内淳
三島種・・・・・二木てるみ
風間俊六・・・・梅宮辰夫
妻・敏江・・・・浜木綿子
妙子・・・・・・北林早苗
千代・・・・・・中村玉緒
慈道・・・・・・加藤嘉
お玉・・・・・・京唄子
うめ・・・・・・村田知栄子
天銀堂店長・・・中田博久
信州の杣人・・・金子信雄
作造・・・・・・中村雅俊
雑炊屋の親爺・・横溝正史
植松・・・・・・角川春樹
2時間16分 ビスタサイズ
●予告編
●ストーリー
戦後間もない昭和22年の東京。銀座の宝石店・天銀堂で店員が青酸カリで毒殺され宝石が奪われるという強盗事件が起きました。
その数日後、富士山麓の青木ヶ原の樹海でその天銀堂の犯人の容疑者である元子爵でフルート作曲家の椿英輔の自殺死体が発見されました。
金田一耕助は長年の盟友でもある等々力警部のいる、その天銀堂捜査本部にいました。
やがて金田一はその容疑者で自殺した椿子爵の椿家を訪ねました。金田一を招いたのは自殺した椿子爵の一人娘・美禰子(みねこ)でした。
美禰子(みねこ)は、等々力警部を通して金田一に調査を依頼したのでした。
美禰子(みねこ)は一枚の紙を金田一に渡します。それは亡き父・椿子爵が娘だけに遺した遺書でした。そこに書かれてあった内容とは・・
この家には悪魔がいる。奴が笛を吹き、私は帰れぬ。
美禰子(みねこ)よ。
父はこれ以上の屈辱と不名誉を耐えていくことは出来ない。
先立つ父を許せ。
と書かれてありました。
金田一はその椿氏の遺書に書かれてあった悪魔が笛を吹く、ということが妙に悪い胸騒ぎを覚えました。
それから、金田一はその椿家ので夕食を共にすることになりました。
椿家は昔から貴族階級で、戦後間もない時代もその栄華の名残りがありました。
美禰子(みねこ)は、父の遺書を何度も読み返し、"父はこれ以上の屈辱に耐えて生きていくことはできない"の意味がまるで判りませんでした。
何故なら、天銀堂事件があったその日は椿子爵は旅行に出掛けて東京におらず、椿子爵が犯人ではないアリバイがあったからです。椿子爵が事件があったその日に天銀堂に現れること自体不可能なのです。
庭で美禰子(みねこ)が金田一に相談している時に、椿家で女中をしているお種が夕食ですと呼びに来ました。金田一は椿家で夕食会にも招かれることになりました。
その夕食会で金田一は亡き椿氏の未亡人であり、 美禰子(みねこ)の母である秌子(あきこ)の麗しい美しさに、思わず見惚れてしまいました。
その夕食が終わると椿家では砂占いするのが習慣でした。
その日は停電の予定がありました。砂占いの途中で電気が消え、再び点いた時、砂には火炎太鼓の模様がありました。
秌子(あきこ)は砂に記されたその火炎太鼓のマーク見てて、ものすごく怯えました。
更にはいきなりフルートの音が鳴り響きます。金田一は椿家で書生をしている三島東太郎らと共に二階に上がると、そのフルートの音は亡き椿子爵のレコードから出た音でした。
誰かが停電を見越して、レコードに針を落とし電気が点くと鳴るように仕掛けたのです。
その後、金田一は椿家を退出しました。
翌朝、等々力警部からの電話で金田一は起こされます。
秌子(あきこ)、利彦兄妹の伯父である元・伯爵の玉虫公丸が殺されたのです。頭部に殴られた痕がありますが、直接的な死因は絞殺でした。
しかし、玉虫公丸が死んでいた部屋は中から鍵がかかっており、つまりは誰も部屋の外からは入れない密室殺人なのです。
これが恐ろしい連続殺人事件の始まりでした。その後、度々現れる死せる椿子爵。
果たして、金田一耕助はこの難事件を解けるのか!?
ストーリーの紹介は以上です。
また、余り詳しく書いてしまうと前・後編で分けなくてはなりませんので、今回は序章部分で止めておきます。
ネタバレになりますが、椿氏の屈辱とは近親相姦です。
それが誰と誰かは想像して下さい。だいたい予想はつきますよね。人物関係が複雑なので、原作を読んでいる人にしか判らないかも・・・
ただ、その近親相姦が親子二代に渡って忌まわしく続いたというのが、この原作の悪魔の調べです。
この映画、公開当時(1979年)見たくて仕方ありませんでしたが、当時住んでいた石川県の能登地方の映画館には遂に回ってきませんでした。
「犬神家の一族」、「八つ墓村」(1977年松竹)、「病院坂の首縊りの家」は地元の能登の映画館でも上映されたんですけどね・・・
だから、公開当時はサントラだけを買いました。映画音楽的にもかなりインパクトが強かったですからね。
映画のポスターやチラシにあるフルートを持っている悪魔の役者は実は女性です。
そのサントラのおまけでついていた映画のイメージポスターには、その悪魔モデルには女性と思われる乳首がうっすらと写っていましたからね。
70年代から80年代は横溝正史ブームの真っ只中でした。当時は横溝正史の金田一耕助シリーズを夢中で読みあさりました。
当然、この原作も既に読んでいました。この原作が映画化される前に放送されたTBSでの横溝正史シリーズで古谷一行・主演での五話連続のテレビドラマで映像化されたのも見ています。
だから、この原作が映画化された知った時は見たくてうずうずしていたのですが、当時中学三年でしたので電車で片道三時間もかかる金沢の映画館まで見に行くことができませんでした。
高校に入ってからは一人で金沢まで映画を見に行くようになりました。この後に公開された「悪霊島」は大ヒットしたおかげで、立ち見で見た記憶があります。
今回の東映で映画化された作品は、もしかしたらビデオレンタルで見たような記憶がありますが、はっきりと見た記憶はないのです。
テレビ放送もやっているとは思いますが、この「悪魔が来りて笛を吹く」だけはそんなにテレビでやっていた記憶がないです。
石坂浩二の金田一シリーズはそれこそ何度なくテレビ放送されていますけどね。
久々にこの「悪魔が来りて笛を吹く」の東映作品を見て少しガッカリしました。
最後の金田一耕助の事件の真相を暴くシーンが何ともなおざりなのです。
玉虫伯爵の密室殺人のトリックを解明するシーンはあるのですが、その後度々現れた死んだ後に現れる椿伯爵が一体何者だったのか、それを説明するシーンがありません。
それに、玉虫伯爵殺害以降に起こる連続殺人についての解明も殆どなしでしでした。
横溝正史の小説ではよく幽霊や亡霊のたぐいが出てきますが、それはどれも生きている人間の成りすましに過ぎないのです。
死んだ人間より、生きている人間の底知れぬ欲望の方が怖いというのが横溝ミステリーの醍醐味でもありますからね。
上映時間が2時間16分ですから、この長いミステリーにして尺が足りません。
せめて2時間半はないと描き切れないような気がします。東宝の市川崑監督による金田一耕助シリーズ五部作は、どれもたっぶり二時間半ありますからね。
この事件でも、金田一耕助は事件関係者の過去を調べるために東京→須磨(兵庫県)→淡路島へと飛んでいますからね。
2時間16分では余りにも駆け足に過ぎます。
それと事件の重要人物である椿夫人の秌子(あきこ)役の鰐淵晴子は、この映画のベットシーンでバストトップを一応は見せていました。
前の鰐淵晴子の主演映画「らしゃめん」では、ヌードシーンは吹き替えだったようです。
そのほかにも、脱ぎ担当では、三島東太郎の妹・お種役の二木てるみが、しっかりとヌードを見せていました。
キャスティングはもの凄く豪華です。
何せ中村雅俊クラスの役者を漁師役のチョイ役で使っているくらいです。
主要キャストの等々力警部役の夏八木勲、金田一の援助をしている風間俊六役に梅宮辰夫 あたりは、いかにも東映映画らしいキャスティングです。
そのほかにも梅宮辰夫の奥さん役に浜木綿子(ゆうこ)。最近、活躍してよくドラマや映画で見る、香川照之のお母さんですよ。この頃の浜木綿子は実に色っぽい女優でした。
最近、息子はよく見るけどお母さんの浜木綿子はとんと見なくなりましたね。
今回の金田一耕助役の西田敏行は、悪くはないんですけど、金田一演じるには少し太り過ぎです。
金田一のイメージは元々ひょろひょろしていて、西田敏行みたいに体は大きくないですからね。
髪の毛、ぼさぼさのところだけは金田一耕助ぽかったですけどね。
でも、音楽だけは秀抜です。この「黄金のフルート」という主題曲、今聴いてもなんか身の毛がよだつようなゾクゾクさせられます。
そういえばこの映画は角川春樹が製作した角川映画でした。初期の角川映画って映画音楽にも力を入れていました。
それだけにこの豪華キャストをして、尻つぼみで終わってしまったのが残念です。
●ラストで流れる、今度は主題歌です。
はっきり言って金田一耕助映画としてはワーストと、言わないまでも、ガッカリレベルでした。
やはり、金田一耕助の謎解きが最初の玉虫伯爵の密室殺人のみで、その後に起こった連続殺人事件の解明をほとんどしていなくて省略してしまっているのが致命的です。
見ていて最後の方は、えーっ!こんなとこで終わるの!って・・なんだよぉ~って失望感の方が大きかったですからね。
もっとも大林宣彦が監督した「金田一耕助の冒険」なんてしようもないパロディーで、完全に番外編というものありますけどね。
ただひとつ。最後に金田一耕助が等々力警部に問い詰められて、ぼそっと語った台詞に胸を衝くものがありました。
"人間の営みの中には、法律じゃ裁けないこともあるんじゃないでしょうか"
横溝ミステリーで描かれる殺人事件の犯人たちは、それは快楽殺人では決してなく、人間の悲しい業というものを背負っています。
その台詞は、原作であったかどうか憶えていませんが、その西田敏行の台詞で余韻を残すラストになっていました。
物語としては凄く悲しいです。
因果応報。親の報いが血を分けた子供にまでに、同じ過ちを犯してしまうのです。
だから、これ以上生きていくことはできない・・・・
真犯人は誰か!?横溝ミステリーにおいては、それはあまり重要ではありません。
犯人がどうしてその犯行をせざるを得なかったのか、そのプロセスがいつも悲しいのです。
いろいろ不満は口にしましたが、やはり「悪魔が来りて笛を吹く」 の映画化作品は、古谷一行のテレビドラマ版を凌駕していたと思えるようになりました。
この映画を何度も見直して、最後の西田金田一の笑顔で何だか救われたような気分になりました。
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